アバター


109シネマ川崎のIMAXシアターで観覧。上映館はたくさんあるが、スクリーンサイズが大きくないと3D効果は大きく薄れるので、3D映像技術の一つの到達点である「アバター」をリアルタイムで最大限体験することにこだわるなら、絶対にIMAXシアター、それも真ん中の列で観るべき(サイドからでは画面のチラつきが大きくなるため)。XpanDよりメガネも軽いので疲れも最小限。ただどっちにしろ字幕は気になるなー。映像に没入することを核にするなら、吹き替えでもう一度観たいところ。


革新的な映像美もさることながら、映画自体の満足度もめちゃくちゃ高い映画だった。さすがジェームズ・キャメロンは、最大公約数的な映画を作らせたら期待に違わない。観客の信頼にしっかり応え、腑に落ちる気持ちよさを提供するこの職人ぶりは見事の一言。この映画、物語的にははっきり言ってベタの極みなんです。主人公が惑星部族の娘と出会うところから先は、誰もが「大体こうなるんでしょ?」と思う、そのとおりの展開ですよ。筋書き的には意外なこととか何一つ起こらないんです。クライマックスの「生き物結集シーン」とか、「劇場版ドラえもんかよ!」と叫びたくなるほどのご都合主義ぶりですよ。「これはのび太と惑星パンドラなんか?桃太郎印のきびだんごでも食わせたんか?」と不満に思う気持ちも確かに少しあります。そもそも惑星の住人が最初から英語わかるっていう時点でねぇ。ちょっと甘すぎないかそれ?人類にとって甘すぎないか?とも思います。


でもやっぱ、「劇場版ドラえもん」って気持ちいいんです。主人公達が困難を乗り越えて、ステレオタイプの悪役をやっつけて、犠牲も出たけど全てのトラブルが丸く収まって、観客の大半が「こうあって欲しい」と思い描く一番幸せな形のエンディングを迎えてエンドロール。「よかったよかった、映画の中の主人公達が幸せになれた」とハッピーな気持ちで家路に着く。これがやっぱ映画を観るっていうことの気持ちよさ、その一番シンプルで力強い形じゃないでしょうか。僕はひねくれた人間なので、「パンドラ人の中にも文明に憧れる奴らがいるかもしれないぞ。パンドラ人が地球人の残していった武器を手に内乱を始めたら…」とか考えないこともないんですけど、やっぱりこういう映画はそういう頭でっかちのデッカチャンで見てちゃいけないと思うんです。「アバター」の冒頭に出てくる台詞は、そういう穿ち過ぎな映画の見方に警鐘を鳴らすものなのかなと思いました。シガニー・ウィーバー演じるグレース博士が主人公に言ってましたよ。「アバターになる時は、頭を空っぽに」って。



P.S. ガスマスク無しでも即行動に移る大佐かっけぇ。軍人の鑑!

40男のバージンロード

40男のバージンロード スペシャル・エディション [DVD]
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成功した不動産マンのピーターは、一目惚れした女性ゾーイに結婚を申し込む。ある時ゾーイの女友達の「ピーターって、実は友達いないんじゃない?」という陰口を聞いてしまい、何とか親友を作ろうと奮闘するのだが、というお話。最近アメリカではこういう男性向けのラブコメが大ヒットしているらしい。


優等生的な人生を歩んできたピーターの前に、やることなすこと型破りなシドニーという男が現われ(ピーターの婚約者に「もっとフェラしてやれよ」とか言っちゃう)、言いたいことも言えないでいたピーターの性格が徐々に変わっていくという感じなんだけど、まぁピーターっていう人はそれ程ダメ人間でもなくて、最初からみんなに好かれてるし、仕事でも大成功してる。つまり親友ができなくてもピーターには幸せな環境がすでにあって、その辺の深刻度の無さが作品のいい意味での軽さにつながっているのかなと。強烈な問題意識が根底に流れる映画もいいけど、こういうゆるーい映画もいいもんだなと思わせてくれる。観ていて物凄く気持ちよくなれる映画だし、映画の中の登場人物になりたくなる作品。


ピーターの環境は最高ですよ。性格も明るいし、嫁さんは綺麗だし、仕事は給料良くて時間にも余裕がある、家族ともうまくいっていて、健康状態も良好。普通の人間の欲しい物は大体全て手に入ってる人間、それがピーター。そんな順風満帆ないけすかないヤンエグ野郎が主人公の映画なんて、普通は観ても面白くないと思うんですけど、これが全然嫌味になってないんだなぁ。金持ちで人生楽しそうな奴しか出てこないのに、なんで登場人物のことが好きになれるのか。能天気に見せて、実はこの辺に物凄いテクニックを駆使してる映画なのかもしれない。作った人達が「こんな生活してえなぁ」と心底思いながら作ったことは確かで、その辺の欲望が正直に出てる部分に好感がもてるのかも。


L.A.のベニスビーチとかが舞台で、雰囲気にも凄く西海岸的楽観ムードが漂っている。日の照りつける海岸で犬の散歩して、タコスサンド食って、酔っ払ってもサンダルでスクーター乗ってブーンと帰っちゃう、そんで大好きな女の子にキスをする。そういう暮らし、正直したいわ! あとゲイも差別されないっていうね。まさにこの世の理想郷、現代人の一番幸福な生活の形がこの映画には具現化されている。だからやっぱ観てて多幸感があるんだろうなー。いい映画!

煽りVグランプリ

1月5日に新宿ロフトプラスワンで開催されたマッスル坂井主催の「煽りVグランプリ」を観てきました。プロレスは割かし好きではあるんですが、あんまり一生懸命シーンを追ってる感じでもないんで、「マッスル」に関する予備知識も、松本さんから色々映像を見させてもらって得たものだけ。ライブに関しては今回が初めて。


とりあえずは、格闘技の試合の前とかに流れる「煽りV」のお笑い芸人バージョンを色々流すっていう趣旨だけ聞いてのこのこ出かけて行ったんですが、いやー、これが面白かった。開演直後こそ、一切先の見えない演出とトークの後になし崩し的に休憩に入っちゃたりで凄く不安になったんですが、本題である芸人さんの煽りVを流し始めてからは凄く引き込まれました。一切売れてないしテレビにも映らない、出れたとしても「あらびき団」レベルのマイナー芸人さん達が、「小さい頃いじめられてて」、「男と女にレイプされたことあるんです」、「今年の目標は友達を作るです」などのヘビーな告白を煽りVの中で重ねた後にする、そのネタの面白いことといったら!


実際言ってることはフリーザ様のモノマネとか、「オチンポどんでん返し」とかどうしようもないことなんですが、こっちは煽りVによって「芸人さんの背負ってるもの」に感情移入させられちゃってるもんだから、実際目の前でで芸人さんが体を張って頑張っているという行為が、凄く神々しい、重たいものに見えてくる。煽りVが焼き付ける生のリアリティが、いつもは何となく見過ごしてしまう芸人さんのネタに求心力を生む。これはやっぱり凄いことだと思います。ネタも面白く見れたんですが、それ以上に出演芸人さん達が人生をさらけ出してまで本当に人を笑わせたいと思っているという、その情熱が感じられたのがほんと素晴らしいし、刺激になりました。感動して出演してた芸人の「楽しんご」に、握手とか求めちゃってましたからね。「あらびき団いつも見てます」って。そんなに見てねぇのに。



楽しんご



決して完成度が高いイベントではなかった気がするんですが、短い準備期間でここまで人生を感じさせてくれる気持ちいいイベントを作れるマッスル坂井って人のポテンシャルはやっぱり凄い! あとはほんと、何事もライブで感じるっていうのは大事だなとつくづく思いましたね。ライブに行かなきゃ楽しんごのデカさとかは一生わからないんだもの。楽しんご、びっくりするぐらい背高いよ! まぁそんなの別に感じたくねーって人が大半でしょうけど、でも自分にとって綺麗な情報が本当に有益かなんてわからないわけですし、久しぶりにこういうライブに行くと、なんか泥だらけになって遊んで帰ってきたみたいな充足感がありますね。免疫力もきっと上がってるはずなんで、今年はほんと色んなものの免疫を上げる年にしたい!

チェイサー

チェイサー
チェイサー ディレクターズ・エディション【初回限定生産2枚組】 [DVD]


観終わってとにかく呆然。


風俗嬢や資産家など21人もの人間を殺した韓国の「ユ・ヨンチョル事件」が元になっている映画で、消えた風俗嬢を探す元締めのヤクザと、犯人の快楽殺人者、そして無能きわまる韓国警察の血生臭い追跡劇が、湿気ムンムンのソウルの街で繰り広げられる。犯人は最初からわかっているし、ストーリーも単純なものだが、120分画面からまったく目を離すことができない緊張感ある演出と、銃器刃物を一切使わず肉体だけでぶつかり合う骨太の格闘シーンが見事。鬼の形相をした汗みずくの男達が、暗い街で鈍器でぼこぼこ殴り合って血だるまになる。平たく言えばそんな映画だが、それがすっごく韓国っぽい。


で、何にそこまで呆然とするかと言えば、映画に関するとある「お約束」が、この映画では確信的に破られているからだ。そしてそれが事前にわかってしまうと、多分この映画を観る意味はなくなる。よりたくさんの人に自分と同じ愕然とした思いを味わって欲しいので、それが何かはあえて秘すことにしたい。人によっては怒り狂うかもしれないし、当然不快にもなるだろうが、あえてこうした手法を選択したが故に、世界で数多く起きる陰惨な事件の被害者の感情、一方的な暴力にさらされ抵抗することもできない者の絶望感を、スクリーンに描き得ているとも言えるのではないだろうか。


この映画の発する理不尽な暴力に打ちのめされ、ほうけた頭で座り込み、煙草をくゆらせる。その時世界のどこかでは、映画の中の被害者と同じ恐怖に晒されている人がいる。確実に。もしかしたらすぐ隣に。

2010年もっと見たい芸人さん

●2700





キングオブコント2008」で名を売って以降あんまり表舞台での活躍がないが、リズム系コントではずば抜けて異様で魅力的な世界観を構築する2700。キャッチーなメロにのせて強烈なバカさをアピールする一方で、動画下の「インナーがダサい」の天丼や伏線の張り方など、時折見せる緻密な打ち回しにも惹かれる。「ヘソ探してる」、「つま先のアイドル」など唯一無二の言語感覚も素晴らしく(つま先のアイドルってなんだよ)、今一番新ネタが見たい芸人さんである。今思い返しても、2008年のキングオブコントにこのコンビを選出した審査員は見事!




エルシャラカーニ

http://www.dai2ntv.jp/variety/gurunai/omoshiroso/000059096z_01.html


Youtubeに動画がないけど、「設定を言わずコントに入ろうとする」、「客に面白いかどうか聞く」など、既存の漫才のフォーマットをあえて破壊する野心的な試みをしているコンビ。天然キャラを装いつつ、そうした一種露悪的な行為をしているのがたまらなく刺激的。放埒なように見えて、「あくまで正道のパロディ」というところぐらいまでに脱線を抑えているバランス感覚も見事。「ダウンタウンDX」や、「ぐるナイ」で注目株として紹介されており、今年かなり売り出してきそうな雰囲気。パンクブーブーノンスタイルなどの正道派が王制を築く一方で、こうした壊し屋的存在の需要も確実に高まっているのかもしれない。2010年はもっとお笑いライブに足を運びたいなぁ。

チョコレートファイター

チョコレート・ファイター [DVD]
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クリスマスイブは一人で「チョコレート・ファイター」を観て過ごしてしまいましたよ。「マッハ!」のピンゲーオ監督が、ジャージャーという逸材を手塩にかけて鍛え上げ、ようやくものにしたこの作品。「マッハ!」とは違い、主人公は「この体でガチンコのアクションをして大丈夫なのか?」と思えるほどの華奢な少女ですが、アクションシーンは「マッハ!」の迫力に勝るとも劣らない……というか主演が女の子の分、どうしても突きや蹴りに軽さが出てくるので、それを食らって派手に倒れるやられ役の役者陣の技術がより要求されたと言いますか、この映画の凄味を実現させたのは間違いなく名も無きぶっ飛ばされ役の皆さんでしょう。もちろんジャージャーも凄くいいんですが、木の杭に腰から叩きつけられるあの人や、ビルの5階ぐらいからとんでもないスピードで落ちて行くあの人がいなければ、これほどこの映画にショックを受けることはなかったかなと。終盤のビルの上での戦いは、ほんと「ありえない」アクションシーンの連続で度肝を抜かれます。



このクリップの3分43秒の落ち方とか、6分15秒のカウンターを食らってそのまま落ちてくやつとか、さすがにCGだよね? これCGじゃなかったら死ぬでしょ? でも謳い文句では「全編CGなし」と言われてるから、ほんとにやったんだろうか。え〜っ!?


エンドロールではジャッキー・チェン映画よろしくNGシーンが流れるんですが、そこのまぁ痛々しいこと。件のビルからの落下シーンでは明らかに頚椎をやっちゃってそうな場面も流れて全然笑えません。いくら人の命が日本やアメリカよりは安そうなタイとはいえ、ここまで体を張らせるなんて! 傷つき散っていった人柱さん達の行く末が気になって、ジャージャーちゃんや阿部寛どころでは無かったんですが、とにかく彼等の犠牲を無駄にしてない傑作アクション映画であることは確かです。柴咲コウが体の張り損となった「少林少女」は、観客含めて浮かばれない魂を量産してしまいましたが、この「チョコレート・ファイター」は違います。散っていった人柱さん達の満足気な笑顔がエンドロールの向こうに見えます。ただストーリーは本気でたるいので、アクションシーンだけ観るぐらいでもいいかもしれません。


主人公が知的障害者という好事家好みのエッジな設定も実に素晴らしい。しかも終盤強敵として出てくるのが、同じく知的障害者カポエラ使い! 電車やバスの中とかでよく「ア゛ッ!ア゛ッ!」とか叫びながら奇異な行動をとってらっしゃる方がいますが、ああいう自分でも抑えられないチック症状的な動きをするので攻撃のパターンが読みにくいという「人間的にも社会的にも大丈夫か? その設定?」と本気で心配になる感じなんですが、ここのファイトは凄く美しいし面白い。チック症状がフェイント的に使えるということを思いついたピンゲーオ先生に一同敬礼!

エヴァ破(ネタバレあり)



1回目観た時に「これはもう一回観ることになるなぁ」と思っていたけれど、案の定男ばかり4人が集まって2回目を観に行ってしまった。「エヴァ序」は正直テレビシリーズの総集編みたいな趣が強くて、そこまでそそられなかったのだけれど(「ヤシマ作戦」とかはそれなりにかっこよかったけど)、今回の「エヴァ破」はキャラ萌えの快楽、残虐ファイトの快楽、「グレンラガン」的王道男の子ストーリーの快楽と、色々な快楽がギュウギュウに詰まっていて、真希波マリさん風に言えば、


「気持ちいいから、イイ!」


である。旧作ではあんなにウジウジウジウジしていたシンジ君が、まるで別人のように「オラァ!やったらぁ!」と使徒に立ち向かって行く様子には胸が熱くなる。エヴァがこういう話になって、しかもそれが熱狂的に受け入れられているということは、「他人とつながりたい、でも世界は怖い」みたいなとこでかったるく悩む話よりは、王道でわかりやすいカタルシスがあって、最終的にオタクとDQNの精神が混じり合っちゃうような話の方が時代に求められているのかもしれないなー、なんてことを思った。


ともかく10年前、男の誰もが思っていた「綾波を幸せにしたい」という願いを今回成就させてくれたのは大変喜ばしい。加持さんミサトさんもこのままなら幸せになれそうだ。トウジも大怪我せず、妹が元気になって本当に良かった。真希波さん、カヲル君は次回の展開に注目。アスカは…アスカは……まぁ…多分元気に復活してくれる…はず…。ああ!「Q」が一刻も早く観たい! 2年も待てない!


もったいつけた小物の配置とか(ネブカド…何?)、「世界って美しいのよ!」と強調して言われたりとか、どう考えても説明でしかない台詞をペラペラとまくし立てるリツコさんなど(とにかく登場人物の独り言が多い!)、勘弁して欲しい部分もあることはあるのだけれど、「大好きな女の子を救うために、男一代、神になる」という気持ちい〜いラストが約束されている以上、そういうのは瑣末なことだ。


一番「いいなぁ」と思ったのは、上映後の映画館のざわつき。誰かとエヴァの話をしたくて仕方がない、俺のエヴァの話を聞いてくれ!と、上映終了直後から各地で議論が巻き起こってる感じ。こういうのってやっぱりエヴァ以外では味わえないと思う。まさにエヴァによって中和される、僕等のATフィールド。


終了後は豚串を食べながら、「真希波も恋とかするのか」、「リツコさんにセクハラして軽くいなされたい」、「アスカはお酒が飲めないのに強がって無理して飲んじゃう」などの酷い会話に終始した。「綾波、ビールはどう?あったまるよ」とか言ってるのを店員に聞かれたりしてたら本当に一大事である(多分聞かれてた)。


綾波の家の前で、車を切り返させるゲンドウの真似」は結構流行りそうな気がしている。



★★★★