未知への飛行 ★★★ (1964/米 シドニー・ルメット)

未知への飛行 フェイル・セイフ

 冷戦時代の核戦争の恐怖を描いた作品。誤ってモスクワに核爆弾を投下する指令を受け取ってしまった爆撃機をどうにかできんもんかとヘンリー・フォンダ演じる大統領が、司令室で汗みずくとなって頑張るお話。帰還命令を下そうとしても「口頭での指示は聞くなと言われている!(敵の陰謀かもしれないので)」とけんもほろろ、戦闘機で撃墜しようにもすでに基地から距離が離れすぎていて燃料が足りない、ソビエト側からの迎撃もレーダー撹乱の技術のおかげで失敗に終わり…と、完璧に構築されたはずのシステムが逆に諸刃の剣と化していく恐怖と緊迫感が素晴らしい。ウォルター・マッソー演じる政治学者なんかは、「先制攻撃だ! この機会に奴等を原始時代に戻してやるのだ!」とキルゴア中佐ばりのアグレッシブな言論を振りかざすが、軍隊経験もないのに口先だけは勇ましい連中が国家の中枢を握っているのは、現在のアメリカの情勢にも似ている。シドニー・ルメットに暑苦しい密室を描かせたら右に出るものはいない!