エレクション(2005/香港 ジョニー・トー)★★★

エレクション~黒社会~ [DVD]

 香港黒社会のボスを民主的に選挙で選ぼうとする話。一旦は人格者のロクで行こうということに決まりかけるが、もう一人の候補である武闘派のディーがゴネはじめ、ボスの証である「竜頭棍」をめぐって抗争が始まる…。ロシアンマフィアを描いた傑作『イースタン・プロミス』もそうだったが、香港マフィアを描いたこの映画でも銃は全く使われず、武器は主に鈍器中心。実際マフィアというのはほとんど銃を使わないらしい。


 ひと頃の犯罪映画と言えば過剰なぐらいの銃弾が飛び交うのが当たり前だったが、最近はリアル志向というのか、人気のない路地裏でサクッみたいな映画が増えてきているように思う。刃物や鈍器は人を殺すまでに時間がかかるが、それだけに「命のやりとりをしている!」という凄味が増すように感じられる。丸太ん棒で何回もぶん殴った挙句、しかもその後片付けまでしなくちゃいけないという面倒臭さ。パチンコみたいな銃で一発パシュンとやるのとは、段違いの生々しさがやはりある。この映画のラストでも爆発するような驚きの殺しのシーンがあるが、その重労働ぶりといったら…。人を殺すまでに越えなきゃいけないハードルで「面倒くささ」というのは結構重要な位置を占めていると思うので、こういう「殺しの面倒くさい部分」を描く映画はもっと増えて欲しい。