グローリー

グローリー
 南北戦争で初めて組織された黒人だけの歩兵部隊が、人間の尊厳と奴隷の解放をかけて絶望的な戦いに赴く…という筋だけ読むといい話ではあるけど、実際のノリは邦画でいう「男たちの大和」とか、あの辺のろくすっぽ人間関係や葛藤を描かず、ただバッタバッタと「崇高っぽい」感じで死んでいく映画とそっくり。とても感情移入はできない。大きな理想のために身命を投げ打つという行為は確かに崇高で感動的だけれど、この映画の場合、仲間達との心の交流や、「本当は生きたいけど。けど!」みたいな部分を十分描かないで、全員ハナっから身命投げ打つ気満々なので、「もうわかったから、早いとこ投げ打てや」としか思えない。最初は「軍隊ならただでメシが食えるから」ぐらいに考えてた黒人兵士達が、だんだん「奴隷解放」という目的の崇高さに開眼し、死を恐れぬ戦士となっていくみたいな話ならすーごくよかったのに、そういう手続きをすっ飛ばして簡単に「とつげきー」とか言われても困りますわ。あと口ひげのせいか、白人士官がウィル・フェレルとかグレアム・チャップマンみたいなコメディアンにしか見えないな。