Grizzly Man ★★★

人が熊に襲われる時の音声 【閲覧注意!残酷です!】




 この音声でグリズリーに襲われているのはティモシー・トレッドウェルと、その恋人エイミー。ティモシーは13年もの間、毎年アラスカにキャンプを張ってグリズリーの生態を研究してきた自然活動家だ。彼の研究スタイルの特徴は、普通なら即座に食い殺されてもおかしくないような超至近距離からグリズリーを撮影すること。まったくの丸腰でグリズリーに近づいていき、「愛してるよ」「いい子だね」等の優しい囁きとともに彼等とのコミュニケーションを計る。また彼等を獣扱いせず、一頭一頭に名前をつけて一人の人間のように扱った。ティモシーはグリズリーを本当の友達だと思っていたし、グリズリーの生き方を尊敬し、彼等のようになりたいと願っていた。が、ティモシーにとって誤算だったのは、グリズリーの方は彼のことを「何だか頭のおかしい奴がいるな」程度にしか認識していなかったことだ。そしてティモシーがグリズリーに近づき始めてから13年目の夏、例によって不用意にグリズリーとの距離を縮めてきたティモシーを見た一頭の年老いたグリズリーは、不意にあることに気が付いた。「こいつ、ひょっとしたら食えるんじゃないか?」


 6分間に渡る音声には、四肢を無惨に引き裂かれる前のティモシーとエイミーの断末魔の叫びが克明に記録されている(映像が残されていないのはエイミーがカメラの蓋を外し忘れたためだ)。


 自然活動家ティモシー・トレッドウェルは、何故グリズリーに極端なまでに接近し、グリズリーを愛し、そしてグリズリーの胃袋に収まるまでに至ったのか? その顛末は映画監督としても著名なヴェルナー・ヘルツォーク(「アギーレ 神の怒り」、「フィツカラルド」など)が、「グリズリーマン」と題したドキュメンタリーにまとめている。で、素敵なことにこの作品、今なら字幕付きのものがニコニコ動画で無料で見ることができるのだ。


http://www.nicovideo.jp/search/grizzly+man


 アラスカの美しすぎる自然を背景に、ナルシスティックな自分語りを繰り返し、「熊のために雨を降らせろ!」と神に対して激昂する完全にイッてしまっている男、ティモシー。「公園管理局の連中は何もしない!」と怒りに任せて「Fuck!」を連呼するところなんかは、なかなか笑えてしまう。それにしてもこのグリズリーとの距離は、見てるこちらが寒気を感じるほどに近い。ティモシー・トレッドウェルは、自然の蛮性を軽んじた愚かな行為ゆえに死んだのかもしれないが、人間が野性のグリズリーにこれほど接近して映像を撮ることは、ティモシーでなければ不可能だったろう。彼のグリズリーへの愛は、一方通行的なものだったとはいえ「本物」だった。こんな真似をして13年間無事だったのだから、思い込む力というのは凄いものがある。