アフタースクール ★★★

アフタースクール [DVD]

 緻密に練りこまれた脚本と二転三転する意外な展開。内田けんじ監督の映画はエンターテイメントとして非常に完成度が高い。「アフタースクール」も本当に面白い映画なんだけれど、「傑作!」とまでは言い切れないのはやはり主人公達が常に安全地帯にいるからだろうか。「アフタースクール」の主人公達はほんとに善人で、常識的で、無駄な力もなく、汗をかくこともないそれはそれは爽やかな人達だが、最初から主導権が自分たちにあるのを知っているんだからそりゃあ余裕もあるわなと。結局初めから負ける心配のない出来レースをしている大泉洋は、探偵役の佐々木蔵之介と一度もハンデ差なしの勝負をしていない。だからラストの「お前がつまんねぇのは、お前のせいだ」という台詞は、自分の心にはまったく響いてこなかった。確かにそうだとは思ったし、正論だと思った。だけど安全地帯から出てこない奴が高みから投げつけるように言った台詞で、人間の心をいい方向に導くことなんてできるだろうか? それは大会社の役員室にふんぞり返って、「貧困層の連中には自己努力が足りない」と吐き捨てる資本家と同じ理屈なのか? 佐々木蔵之介の心とがっぷり四つになる覚悟は大泉洋にはなかったのだろうか。


 だとしたらそれは何だか、非常にさみしいことだなぁと思ってしまった。大泉洋が基本的には「爽やかで自己犠牲精神にも溢れたヤツ」として描かれているのだから、あの瞬間の佐々木蔵之介との断絶はなおさらキツイものがある。自分の考え方が古くて浪花節チックなだけなのかもしれないが、教師とは野良犬の目線に降りてきて、一緒に泣いてくれる人のことだと思っていた。面白いけど、どこか血が通っていないような、そんな印象をもった映画だった。