3月観た映画

奇跡のシンフォニー (07/米 カースティン・シェリダン)

 絶対音感を持つ少年が、ひどいご都合主義の奇跡を経た後に生き別れた両親と再会するお話。「何となく泣きたいなー」という気分の人が観て、「あーいい話だった」とポロポロ涙をこぼし、後には何も残らないちり紙のような映画。ファンタジーを支えるのはリアリズムなのに、現代劇にしてこのリアリティのなさはなんだ!(ドン!)



遊びの時間は終わらない (91/日 荻庭貞明)

 銀行強盗を想定した訓練のはずが、犯人役の警官がカタブツ過ぎて、事態は次第に警察機構やマスコミを巻き込んだ大騒動へ発展…というコメディ映画。舞台が変わらない割に若干テンポがゆるいのが退屈な感じもするが、犯人役の警官の用意周到ぶりや、警察官僚の間抜けぶりが笑える映画。視聴率の欲しいマスコミが犯人役に加担して、警察を糾弾するなんて構図も面白い。



●チャレンジキッズ 〜未来に架ける子供たち〜 (02/米 ジェフリー・ブリッツ)

 原題「Spellbound」。アメリカでは非常に盛んらしい、「スペル暗記大会」に出場する子供達を追ったドキュメンタリー映画学術書にしかのっていないような非常に難解な言葉のスペルを一文字ずつマイクの前で正確に発音するという競技は緊張感に溢れ、スポーツ専門チャンネルESPNで全米に中継されるのも納得の面白さ。

 出場する子供達が学校では「つまはじき」にされているであろう非モテな感じの子ばかりで(年中難解なスペルばかり覚えていたら、そりゃあ友達もできにくいだろうが)、日本で言う「高校生クイズ選手権」を観ている時のような面白さがある。



●once 〜ダブリンの街角で〜 (06/アイルランド ジョン・カーニー)

 芽が出ないストリートミュージシャンにある日可愛い女の子が「その曲いいね」と言ってくれて、しかもその子がピアノが弾けてセッションができちゃった!やる気出てきたどー!という、なかなか素敵なお話。劇中で使われている曲がめちゃんこイイので、自然と応援したい気持ちが湧いてくる。特に素晴らしいのがアカデミー賞主題歌曲賞も受賞した「Falling Slowly」。



 ↑の動画にもあるけど、二人が出会って間もない頃にこの曲を楽器店のピアノを使わせてもらって弾き語るシーンがイイんだなぁ…。女の子役のマルケータ・イルグロヴァーも美人だし…。結末もありきたりのハッピーエンドではなくオシャレですわ!



●事件 (78/日 野村芳太郎

 どこにでもありそうな痴情のもつれからくる殺人事件を、豪華役者陣とリアリティある脚本でたっぷり140分。意外な展開やどんでん返しなんかがあるわけではないので、ドラマとしてはちょっと生真面目過ぎるが、全編人間の欲望と情念の漂うおもたーい作品になっている。若き日の大竹しのぶ松坂慶子の演技も凄い。まぁしかし面白さで言えば、同じ野村芳太郎作品の「疑惑」の方が全然上か。



アラビアのロレンス (62/米 デヴィッド・リーン

 あまりにも有名過ぎる大作映画となると自然に敬遠しがちになるけど、ついに片づけた時の「やっつけた!」感はすごい。ただまぁ正直そんなに面白くはなかった。「ベン・ハー」もいつか…。



ランボー 最後の戦場 (08/米 シルヴェスター・スタローン

 完全に悟りの境地にでも達したのではないかと思えるスタローンの近年の充実ぶり、ブレなさは凄まじい。カメラ目線でコンパウンドボウを構え、「無駄に生きるか、何かの為に死ぬか 、お前が決めろ!」とやるところなんか、日本の映画で大沢たかお辺りがやっていたら爆笑ものだと思うが、スタローン、いや、ジョン・ランボーがそれを言っているというだけで自然と背筋が伸びてしまう。

 「戦争って恐ろしいし、めちゃ愚かだからやめましょうね」という地点で思考停止しがちだった近年の戦争映画の頭上を飛び越え、「戦争が恐ろしいか愚かしいかは、お前自身が決めろ!」と観客に覚悟を迫ってくるスタローン先生は大マジであり、兵士を「状況の犠牲者」として描くことを許さない点にこの映画の強度がある。この映画を見て感じる爽快さ、不快さ、怒りや虚しさ、矛盾がないまぜになった複雑な気持ち。誰にも割り切れる単純な結論なんて存在しない。人間は割り切れないものを全部引き受けて生きていくしかないんだ!



●いとこのビニー (92/米 ジョナサン・リン)

 「ホームアローン」の泥棒役や、「グッドフェローズ」、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」などの怒りっぽいイタリアンマフィア役でお馴染みのジョー・ペシが、とっぽい弁護士を演じるゆるーい法廷モノ。司法試験に何回も落ちまくったダメ弁護士が、手探りで裁判をすすめていく様子がユーモラス。



ウォッチメン  (09/米 ザック・スナイダー

 超面白いです!



●ドラゴンキングダム (08/米 ロブ・ミンコフ)

 カンフーオタクが、ジャッキー・チェンジェット・リーのいる中国に飛ばされ成長を遂げるカンフー版ネバーエンディングストーリー。二大カンフースターの共演に関しては特に言うことないけど、主人公のカンフーオタクの特訓シーンが少ないのがちょっとなー。「カンフーパンダ」はちゃんと特訓やってたぞ!



●P2 (07/米 フランク・カルフン

 キワモノかと思いつつ観たら、「あれ?意外にちゃんと面白い!」という「クライモリ」的な感動があるサイコスリラー映画。クリスマスの夜に会社に閉じ込められたキャリアウーマンが、変態の警備員にあれやこれやされてしまうお話。あれやこれやされる方のレイチェル・ニコルズが、常に上乳パンパンで頑張るのが素晴らしくてのぅ…。やられっぱなしの女主人公が、後半ついに逆襲に転じる時の快感がまたイイ!



●夜と霧 (55/仏 アラン・レネ

 ユダヤ強制収容所の記録フィルムとともに、人類史上最大の犯罪を観客につきつけるドキュメンタリー映画ユダヤ人女性の頭から刈られた髪の毛が、大量に積まれてるシーンがショッキング。それでカーペットを作ってたっていうんだからすごい話だな。



●恐怖の報酬 (52/仏 アンリ・ジョルジュ・クルーゾー)

 南米の田舎町で貧困にあえぐ男達が、ある日アメリカの石油会社から仕事を持ちかけられる。それはちょっとした衝撃でも爆発する大量のニトログリセリンをトラックに積み、舗装されていないボコボコの道路を走行して500キロ離れた油田まで運ぶという危険な仕事だった…。悪路をトロトロ走行する映画でスピード感はないものの、腐った橋を渡らないといけなかったり、大きな石が行く手にふさがってたりして、サスペンス要素には事欠かない。

 最初主人公の兄貴分的存在だったオッチャンが、完全に腰砕けになって主人公との力関係が逆転する描写が面白い。半泣きで「お前も年をとればこうなるんだよぉ!」と叫んだり、ビンタされて「いじめないでくれ!」とスンスン泣き始めるオッチャンが可愛すぎる。口ひげオッチャンフェチは必見!



●DRAGONBALL EVOLUTION (09/米 ジェームズ・ウォン

 できそこないの「ドラゴンキングダム」としか言いようがない酷さ。「ドラゴンボール」をアメリカ青春映画とカンフー映画のフォーマットでやろうとするとこんなにつまらなくなるんだなぁ、という点が確認できたのはよかったかもしれない。凶悪な宇宙人(ベジータ、ナッパ、フリーザ、ギニュー辺り)を、世界中から集められた武芸の達人たちが迎撃するみたいな単純な方が面白かっただろうな。そっちの方がいくらでも原作のキャラクターや名シーンを使って遊べたし、100億円も使ってこんなスケールの小さい話では…。制作チームには同人魂がなさすぎるよ!




3月計 14本


2009年累計 45本