チョコレートファイター

チョコレート・ファイター [DVD]
チョコレート・ファイター [DVD]


クリスマスイブは一人で「チョコレート・ファイター」を観て過ごしてしまいましたよ。「マッハ!」のピンゲーオ監督が、ジャージャーという逸材を手塩にかけて鍛え上げ、ようやくものにしたこの作品。「マッハ!」とは違い、主人公は「この体でガチンコのアクションをして大丈夫なのか?」と思えるほどの華奢な少女ですが、アクションシーンは「マッハ!」の迫力に勝るとも劣らない……というか主演が女の子の分、どうしても突きや蹴りに軽さが出てくるので、それを食らって派手に倒れるやられ役の役者陣の技術がより要求されたと言いますか、この映画の凄味を実現させたのは間違いなく名も無きぶっ飛ばされ役の皆さんでしょう。もちろんジャージャーも凄くいいんですが、木の杭に腰から叩きつけられるあの人や、ビルの5階ぐらいからとんでもないスピードで落ちて行くあの人がいなければ、これほどこの映画にショックを受けることはなかったかなと。終盤のビルの上での戦いは、ほんと「ありえない」アクションシーンの連続で度肝を抜かれます。



このクリップの3分43秒の落ち方とか、6分15秒のカウンターを食らってそのまま落ちてくやつとか、さすがにCGだよね? これCGじゃなかったら死ぬでしょ? でも謳い文句では「全編CGなし」と言われてるから、ほんとにやったんだろうか。え〜っ!?


エンドロールではジャッキー・チェン映画よろしくNGシーンが流れるんですが、そこのまぁ痛々しいこと。件のビルからの落下シーンでは明らかに頚椎をやっちゃってそうな場面も流れて全然笑えません。いくら人の命が日本やアメリカよりは安そうなタイとはいえ、ここまで体を張らせるなんて! 傷つき散っていった人柱さん達の行く末が気になって、ジャージャーちゃんや阿部寛どころでは無かったんですが、とにかく彼等の犠牲を無駄にしてない傑作アクション映画であることは確かです。柴咲コウが体の張り損となった「少林少女」は、観客含めて浮かばれない魂を量産してしまいましたが、この「チョコレート・ファイター」は違います。散っていった人柱さん達の満足気な笑顔がエンドロールの向こうに見えます。ただストーリーは本気でたるいので、アクションシーンだけ観るぐらいでもいいかもしれません。


主人公が知的障害者という好事家好みのエッジな設定も実に素晴らしい。しかも終盤強敵として出てくるのが、同じく知的障害者カポエラ使い! 電車やバスの中とかでよく「ア゛ッ!ア゛ッ!」とか叫びながら奇異な行動をとってらっしゃる方がいますが、ああいう自分でも抑えられないチック症状的な動きをするので攻撃のパターンが読みにくいという「人間的にも社会的にも大丈夫か? その設定?」と本気で心配になる感じなんですが、ここのファイトは凄く美しいし面白い。チック症状がフェイント的に使えるということを思いついたピンゲーオ先生に一同敬礼!