崖の館

崖の館 (創元推理文庫)
 汚れなき少女の視点で描かれる哀しい殺人事件。哀しいというのは幼い頃から一緒に育った従兄弟の一人が犯人がから。「完璧な幸福」が悲劇の引き金になる、というのもどこか物哀しい。よくニュースなどで「幸せな一家を襲った突然の悲劇」という表現があるが、彼等は幸せだからこそ悲劇に見舞われたのだということを考えると、人間は普段から「不幸不幸!俺不幸!」と思い込んで生きていた方が落差が少なくていいのかという感じもする。不幸自慢になるとそれはそれで鼻につくのだが。「汚れなき少女」を表現するための描写にはかなりイラっとくることもあるけど、我慢して読んでいくと結構面白い。